Mのメモ

ポスドクの論文メモ。神経科学関連のツールに触れることが多め。

RNA染色のための組織透明化

Multiplexed Intact-Tissue Transcriptional Analysis at Cellular Resolution

Emily Lauren Sylwestrak, Priyamvada Rajasethupathy, Matthew Arnot Wright, Anna Jaffe, Karl Deisseroth
Cell 2016, 164(4), 792-804

CLARITYの架橋にはPFAとアクリルアミドを用いているんですが、この架橋方法、実は熱に弱いのだそうです。タンパク質は保持できても、核酸の保持には向いてないとのこと。そこで、Deisserothのグループは新たな架橋方法を開発しました。あと染色について色々と条件検討をしているようです。

  • EDC(1-Ethyl-3-3-dimethyl-aminopropyl carbodiimide)はRNAのリン酸部位を架橋する。この固定剤はRNA保持能を上昇させるが脱脂の速度を大幅には低下させない。
  • 蛋白質ベースのプローブより核酸ベースのプローブの方が組織への浸透が速い
  • チラミドによるシグナルの増幅はサンプルの表面のみにしか有効でないが、Hybridization Chain Reactionによるシグナルの増幅は組織深部に対しても有効である(ヘアピン構造を取る核酸に基づいたプローブが、標的配列に出会った時に開裂する。開裂することによって更に別のヘアピン構造を開裂できるようになる。これが連鎖して起こることにより、シグナルが~200倍に増幅させられる)

2013年の最初のCLARITY論文はISHも普通にできるような印象を与えるものだったので、若干のマッチポンプ感は否めませんが、面白い論文でした。条件検討について赤裸々に書いてくれていたので、ブログには書きませんが参考になることも多かったです。余談ですが、今回透明化には電気泳動は用いられておらず、全部浸透によって行われています。電気泳動は再現性が低いとの悪評があるのですが、本家でも使われていないということは、やはりそういうことなんだろうなぁという印象。