Mのメモ

ポスドクの論文メモ。神経科学関連のツールに触れることが多め。

毒性の少ない(?) Iodixanolでin vivo深部イメージングが可能に?

A tunable refractive index matching medium for live imaging cells, tissues and model organisms

eLife 2017;6:e27240 DOI: 10.7554/eLife.27240
Boothe T, Hilbert L, Heide M, Berninger L, Huttner WB, Zaburdaev V, Vastenhouw NL, Myers EW, Drechsel DN, Rink JC

光の散乱を抑えるためには、標本とそれを浸す溶液の屈折率を揃えることが肝要です。ただし、これまで3DISCO, CLARITY, Scale, CUBIC 等, in vitro標本透明化で用いられてきた屈折率調製溶液(RI=1.45~1.52くらい)は、毒性があったり浸透圧が高かったりでin vivo標本への適用は困難でした。

著者らは、屈折率増分の高い化合物であるIodixanolは、毒性・浸透圧への影響が少なく、in vivo標本に適用可能であるということを主張しています。根拠となるデータは以下の通り。

  • Iodixanolは溶媒の屈折率を濃度依存的に、線形に上昇させる。60% Iodixanol溶液のRIが大体1.43。なお、水は1.33程度(Fig. 1a)。
  • 50% Iodixanolの浸透圧はPBSより低い(Fig. 1f)。
  • 30% Iodixanol を含む培地でもHeLaは3日間は正常に増殖する。また、20% Iodixanol を含む水の中でも受精卵から発生したゼブラフィッシュは正常な体長を持ち、生存率も正常。更に、50% Iodixanolを含む水の中でもプラナリアは3週間生き残る(Fig. 2)
  • Iodixanol溶液を用いて屈折率を1.33から1.36に上昇させることにより、オルガノイドを構成する細胞の像が深部(とは言っても、40 um。笑)でも鮮明になる。Hoechstで染色(Fig. 3)。
  • Iodixanol溶液を用いて屈折率を1.33から1.41に上昇させることにより、プラナリアの体細胞の像が深部(とは言っても、80 um。笑)でも鮮明になる。RedDot2で染色(Fig. 4)。

今回やられている実験系で適切に毒性のアッセイができているのかは疑問ですし、イメージングデータの例数はごく僅かで定量方法も雑、深度もぶっちゃけかなり浅いですが、まぁよくeLIFEに通ったなぁ、というのが正直な感想。それくらいin vivoで深部組織を簡易にイメージングしたいというニーズがあるのかもしれません。なお、Iodixanolは細胞内液を置換することがないのか、組織そのものが透明になるわけではないようです。あくまで外液と組織の屈折率が近づくだけ、と。