rAAV2-retro|効率よく逆行性感染する新規AAVセロタイプ
A Designer AAV Variant Permits Efficient Retrograde Access to Projection Neurons
D. Gowanlock R. Tervo, Bum-Yeol Hwang, Sarada Viswanathan, Thomas Gaj, Maria Lavzin, Kimberly D. Ritola,Sarah Lindo, Susan Michael, Elena Kuleshova, David Ojala, Cheng-Chiu Huang, Charles R. Gerfen,Jackie Schiller, Joshua T. Dudman, Adam W. Hantman, Loren L. Looger, David V. Schaffer, and Alla Y. Karpova
Neuron 92, 1–11
逆行性に何かを飛ばそうとするときpseudotyped RabiesやCAV2が良く使われていますが、毒性の高さや感染効率の低さが問題でした。そこで今回、Karpova, SchafferらのグループはAAV2のゲノムに変異を入れていき、毒性が低く、かつ効率よく逆行性感染する新たなセロタイプを作り出しました。何といってもFigure 2が衝撃です。ウイルスでFluoro-Goldより強いとか。。
■ スクリーニング系について
AAVの基礎知識はこちらをご覧ください。
https://www.cosmobio.co.jp/support/technology/a/adeno-associated-virus-aav-apb.asp
AAVはセロタイプによって、少しではありますが逆行性に感染する特性を持つことが分かっています。そこで、今回KarpovaとSchafferらは、既存のAAV capライブラリを足掛かりに、以下のような手順で、逆行性に感染する特性を強くするようにAAV capを改変していきました(Kotter and Schaffer, 2014)。
結果、このプロセスを4回繰り返して強く逆行性感染する30のセロタイプを同定しました。これらのセロタイプは全て、野生型AAV2のカプシドタンパク質VP1の587番目と588番目のアミノ酸の間に10個のアミノ酸を人工的に導入したものであり、その並びはLAxxDxTKxAかLAxDxTKxxAとなっていました。なお、この領域は本来AAV2のco-receptorであるヘパリンと結合するためのものであり、今回導入されたような10個のアミノ酸を入れたことによって別のタンパク質に結合していると考えられます。そのタンパク質に結合することが逆行性感染に必要であるのではないかと考察されていました。
その後、30個の中からさらに17個のシーケンスを選び、それぞれのcapをヘルパーにCMV-EGFPをパッケージしました。その中でも例の10個のシーケンスがLADQDYTKTAである(ほかにV708IでN382Dの変異もある)クローンが特に強い蛍光を示し、これをrAAV2-retroと名付けました。Fig. 2-6はこのセロタイプの性能のデモになっています。
■ 注意点
Table S1で色々な領域に打った結果を示しています。mPFC, OFC, CA1-4, 偏桃体、視床、線条体、側坐核、MEC, 海馬支脚, V1, M1, 脊髄, 筋肉できちんとワークしています。ただし、上丘とdLGNではワークしないようです。経路によっては逆行性に行かないこともあるので、注意が必要なようですね。
■ 入手可能か?
現在のところVector CoreでこのセロタイプでパッケージされたAAVは入手可能ではありませんが、addgeneでパッケージ用のプラスミドを買うことができます。ですので、自分でAAVを作れるところでは作れる、という状況です。
https://www.addgene.org/81070/
追記(17/5/16):
なんかAddgeneでready to useのvirusが手に入るようになったらしいです。rgって書いてある奴。あら便利。
www.addgene.org